北海道

第4章 計画の主要施策

第5節 安全・安心な国土づくり

 安全・安心の確保なくして国民の生活や経済社会の安定は図れない。地震、水害等の災害から国民の生命や財産を守ること、交通の安全確保など、安全・安心の確保は、国の最も重要な責務の一つであるとともに、経済社会活動の基盤である。北海道は、水害による被害額が全国でも有数であるとともに、多数存在する活動的な火山による災害、日本海溝・千島海溝等で発生する地震災害等の危険性が高く、自然災害に対していまだ脆弱な地域である。さらに、地球温暖化に伴う気候変動等による集中豪雨等の増加や海面上昇等、災害リスクの増大が懸念される。このため、安全・安心な国土づくりを着実に推進する必要がある。
 
(1) 頻発する自然災害に備える防災対策の推進
 
(根幹的な防災対策の推進)
 自然災害が頻発し、災害リスクの増大が懸念されている状況にかんがみ、水害に対し、堤防、洪水調節施設等の根幹的な治水施設等の整備、近年被災した河川における再度災害を防止する対策等の治水対策、下水道による浸水対策を重点的に推進する。
 集中豪雨や火山の噴火等により発生する土砂災害に対し、人命等を守るための土砂災害対策を推進する。特に、住民等の避難路、避難場所の確保、災害時要援護者の安全確保等のための対策を重点的に推進する。また、噴火等により機能が損なわれた場合、経済社会への影響が極めて大きい中枢的交通基盤等の保全を推進するとともに、代替機能確保のための対策を推進する。
 長大な海岸線を持つ北海道における津波、高潮、波浪等による被害から海岸を防護する総合的な海岸保全を推進する。
 道路について、異常気象時通行規制区間等における岩盤斜面対策等の防災対策を優先して推進し、道路密度の低い北海道において信頼性の高い道路ネットワークの構築を図る。
 山地災害を防止するため、計画的な保安林の配備を推進するとともに、近年の災害の発生形態の変化を踏まえ、山地災害危険地区の的確な把握等を図りつつ、国有林と民有林を通じた計画的な事業の実施等により効果的な治山施設の設置等を推進する。
 農地、農業用施設を災害から守るため、地すべりの防止等の防災対策を推進する。
 災害などによる大規模な断水は国民生活に大きな影響を与えることから、災害時にも安定的な水道用水の供給ができるよう、水道施設の整備を促進する。
 
(日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震等、地震・津波に備えた防災対策の推進)
 北海道では、釧路沖地震、北海道南西沖地震、十勝沖地震等、近年においても大規模な地震が発生していること、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域の指定があったこと等を踏まえ、防災関係機関、NPO、企業、地域住民が連携した地震・津波防災対策を推進する必要がある。
 このため、避難場所の整備、地震・津波情報の早期提供、緊急地震速報の利活用等を推進する。また、救急・救命、避難、緊急物資輸送等を確保するための緊急輸送道路の橋梁の耐震補強、港湾における耐震強化岸壁を配備した臨海部防災拠点の整備、空港・漁港施設や河川構造物、海岸保全施設の耐震強化を推進するとともに、被害軽減のための河川、港湾、海岸における津波対策等を推進する。さらに、避難路や緊急輸送道路沿道等の住宅・建築物の倒壊等による被害軽減を図るため、住宅・建築物の耐震化を促進する。
 
(豪雪対策及び積雪寒冷地域における防災対策の推進)
 豪雪等による国民生活や経済社会活動への影響を緩和するため、豪雪時の情報連絡本部設置など除排雪における関係機関の連携等を強化する。また、冬期の地震・津波発生時等においては、避難路の積雪や凍結によって避難が困難となることが予想されるため、避難路の除雪・防雪・凍雪害防止対策の強化推進、冬期を想定した避難訓練実施等、積雪寒冷地域の特性を考慮した防災対策を推進する。
 
(2) ハード・ソフト一体となった総合的な防災・減災対策の推進
 
(地域防災力を向上させる取組の推進)
 安全・安心の確保には、災害が発生した場合においても国民生活や経済社会活動に深刻な影響を生じさせないよう、施設整備等のハード対策と併せ、防災情報の高度化、防災関係機関の災害情報伝達体制の整備等、被害の軽減を図るソフト対策を一体的に進めることが重要である。また、高齢化等の経済社会の変化に伴い、地域防災力の低下等も懸念されていることから、地域住民や企業を含めた自助、共助、公助のバランスの取れた地域防災力の再構築など、総合的な防災・減災対策を講じることが必要である。
 このため、迅速かつ円滑な災害対応を行うため、防災情報の高度化、防災情報共有体制の整備、防災情報伝達基盤の強化を推進するとともに、現地での速やかな応急対策実施や復旧活動支援のため、被災地への緊急物資輸送等を確保するための体制整備、災害対策用機械の効率的運用、防災資機材の適正配備など、防災関係機関の連携強化を推進する。
 また、市町村による洪水、津波、高潮、土砂災害、火山災害等の各種ハザードマップの作成・普及に対する支援、職員の防災技術向上のための講習会の実施等、地方公共団体の防災力向上を支援する取組を推進する。
 さらに、NPO等との協働による防災教材の作成・普及等、地域における防災教育活動を推進するとともに、防災関係機関と地域住民が参加する防災訓練の実施など、地域との協働による防災対策の取組を推進する。
 
(災害に強いまちづくりの推進)
 地域に根付いた防災・減災対策を実施するためには、まちづくりや住まい方等を含め、関係する様々な主体が相互に連携し、総合的に取り組む必要がある。
 このため、土砂災害警戒区域等の指定、特定開発行為の制限促進等、災害の危険度を考慮した計画的な土地利用に努めるとともに、防災拠点となる公園・緑地、避難路、防災ステーション等の整備を推進する。また、堤防、遊水地等の整備とまちづくり・地域振興施策とを連携させるなど、災害に強いまちづくりを推進する。
 
(多様な災害・事故等に対応する体制の強化)
 油流出事故に伴う海洋汚染の拡大を防ぐための体制の整備、国際交流の窓口である港湾・空港を始めとする重要施設、公共交通機関等におけるテロ対策の強化など、多様な災害・事故の被害軽減やテロの未然防止に向けた取組を推進する。
 
(大規模災害時等、非常時の業務執行体制の確保)
 国、地方公共団体は、災害・事故発生時の対応のみならず、広く住民生活にかかわる重要な業務を遂行する責任を負っている。また、我が国の経済社会活動に深刻な影響を及ぼす大規模災害が発生した場合、被災地の速やかな復旧・復興には、周辺地域のみならず全国的な視点を持った支援が必要である。
 このため、災害・事故の経済社会活動への影響を最小限にするため、官民それぞれの立場から非常時における業務執行体制確保のための取組を推進するとともに、広域的な支援体制確立のための取組を推進する。
 
(3) 道路交通事故等の無い社会を目指した交通安全対策の推進
 北海道の交通事故死者数は、毎年高い水準で推移しており、安全な道路交通環境の整備が必要である。このため、道路網の体系的整備と併せ、事故データの客観的な分析に基づき、事故の発生割合の高い区間において集中的な事故対策を推進するとともに、人優先の安全・安心な歩行空間の確保を推進する。
 また、情報通信技術を活用した道路情報提供や冬期道路管理の高度化等を推進するほか、積雪寒冷地域における道路交通の安全確保や郊外部における重大事故などの北海道特有の交通課題に関する研究開発を推進する。
 港湾内の静穏度向上等により海上交通の安全性・安定性の向上を図るため、防波堤を始めとする外郭施設や航路、泊地等の水域施設の整備を推進する。
 航空輸送における安全・安心を確保するため、道内各空港における基本施設や航空保安施設等の機能を保持するための更新・改良等を着実に推進する。

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